ワシントン州議会が可決した2025年および2026年施行の雇用・労働に関する改正法案について、その法律の一部を以下にご紹介します。雇用主の皆様には、関連する社内規定の見直しと、必要に応じた改訂を行うことが推奨されます。
1. 移民手続のための有給病気休暇取得
2025年7月27日以降、従業員は、自己または家族の移民手続きのため、有給病気休暇を取得することができます。この休暇の証明が求められた場合、移民・難民法的支援者、弁護士、聖職者もしくは他の専門家からの書類、または従業員本人による自己もしくは家族が対象となる移民手続きに関与していることを示す書面を提出することができます。この証明書類には、個人の移民ステータスや根拠となる移民保護に関する個人を特定できる情報を含めることはできません。
2. 有給家族・医療休暇制度に基づく雇用復帰および雇用保障
ワシントン州有給家族・医療休暇制度(PFML)に基づき、従業員は、家族休暇または医療休暇から復帰する際、休暇前と同等、または福利厚生、給与、その他の労働条件において、これに準ずる地位に復帰する権利を有します。
2026年1月1日より職場復帰の資格要件が変更され、雇用期間と労働時間に関する要件について、これまでの「12ヶ月間の雇用期間」および「休暇直前の1年間における最低1250時間の労働」から、「180日間の雇用期間」のみに変更されます。また、適用対象となる雇用主を決定するための従業員数の基準値も変更され、現在の最低50名から、2026年には最低25名、2027年には最低15名、2028年以降は最低8名となります。
復帰資格のある従業員は、PFMLに基づく休暇だけでなく、連邦家族医療休暇法(FMLA)に基づく無給休暇から復帰した場合において、この無給休暇期間中にPFMLに基づく給付金の受給資格があったにもかかわらず申請・受給しなかった場合にも、職場復帰の権利を有します(但し、改正ワシントン州法典(RCW)49.60 条に基づく妊娠・出産のための無給病気休暇もしくは一時的障害休暇、またはRCW 43.10.005に基づく合理的配慮(accommodation)としての休暇を除く)。
雇用に関する書面による合意がない限り、従業員は、(1) 休暇後、または (2) 連続52週間における16労働週(妊娠に関連する重篤な疾患による就業不能の場合は18労働週)の連続期間もしくは断続的期間の合計の休暇後、いずれか早い方における最初の勤務予定日に職場復帰の権利を行使しない場合、その権利を失います。
2労働週を超える休暇または合計14労働日を超える断続的な休暇の場合、雇用主は、職場復帰の権利の推定有効期限と最初の勤務予定日について、少なくとも5営業日前に従業員に書面で通知する必要があります。また、雇用主は、(1) 従業員がFMLAに基づく無給休暇を最初に申請または取得した日から5営業日以内、および (2) 指定された12ヶ月間の休暇期間の残存期間中は少なくとも毎月、書面で通知する必要があります。
3. 単独作業従業員(Isolated Employees)のための安全基準強化
ワシントン州差別禁止法では、雇用における不当で差別的な行為から個人を保護するための規定を定めています。この法律に新たに追加された規定が2026年1月1日に施行され、単独作業従業員(isolated employee)の職場安全基準が強化されます。単独作業従業員とは、(1)(a) 2人以上の同僚、上司もしくはその両方が、従業員からの呼び出しがなければ緊急事態に直ちに対応できない場所で業務を行う者、または (b) 最低半分の勤務時間を上司や他の同僚がいない状態で過ごす者、および (2) 清掃員、警備員、ホテルまたはモーテルの客室係、ルームサービス係として雇用されている従業員を指します。
改正法は、単独作業従業員を雇用するホテル、モーテル、小売業者、警備会社、または不動産サービス請負業者に対し、各単独作業従業員に緊急ボタン(panic button)を提供し、提供した緊急ボタンの購入および使用状況の記録を保持することを義務付けています。雇用主は、管理者、上司および単独作業従業員に対して研修を実施し、緊急ボタンの使用方法を単独作業従業員に周知させ、また緊急ボタンが使用された場合の対応責任を管理者と上司に周知させる必要があります。
緊急ボタンは、(1) 単独作業従業員が携帯できるように設計されていること、(2) 遅延なく容易に作動できること、(3) 作動時に効果的な信号を発すること、(4) 即時に支援を要請でき、対応者が単独作業従業員の正確な位置を特定できることを満たす必要があります。
4. ヘイトクライム被害者に対する保護休暇
ワシントン州では2026年1月1日より、ヘイトクライム被害者である労働者は、州の家庭内暴力休暇法および有給病気休暇法に基づき休暇を取得することができます。「ヘイトクライム」とは、加害者が他者の人種、肌の色、宗教、祖先、出身国、性別、性的指向、性自認・性表現、または精神的、身体的、感覚的障害に対する認識に基づき、他者への暴行、他者の財産への物理的な損害や破壊、または特定の人物や集団への脅迫を行い、その人物や集団の構成員に対し、合理的な恐怖を与える行為(未遂や容疑を含む)を指します。「ヘイトクライム」には、オンラインやインターネットを介した通信によって行われた犯行も含まれます。
5. 公平機会法に基づく犯罪経歴調査
ワシントン州公平機会法は、対象となる雇用主に対し、犯罪歴の有無の点を除いて求職者が対象職務に適格であると、雇用主が初期段階で判断するまで、求職者の犯罪歴を要求することを禁じています。2026年以降、雇用主は、求職者の犯罪記録入手を条件とした上で、雇用の提示を行うまで、求職者の犯罪歴を要求することが禁止されます。
また、雇用主は、求職者もしくは従業員の逮捕歴や少年犯罪歴、または正当な事業上の理由なく成人犯罪歴のみに基づいて、不利益な雇用措置(解雇等)を講じることが禁止されます。
雇用主は、不利益な雇用措置を講じる前に、求職者または従業員に対し、正当な事業上の理由を評価するために使用する記録を通知し、特定する必要があります。雇用主は、求職者や従業員が記録の訂正や説明を行ったり、更生、善行、職務経験、教育、訓練に関する情報を提供する等の合理的な機会を与えるため、最低2営業日間は当該職務を空けておく必要があります。
雇用主が不利益な雇用措置を行った場合、雇用主は対象求職者または従業員に対し、決定の理由および各関連要素の評価に関する具体的な文書等を含む決定書を書面で提供する必要があります。
雇用主は求職者に対し、募集職務は条件付きの雇用提示を行った後に身元調査の対象となることを開示することができます。また、求職者は、面接中に自発的に自己の犯罪歴を開示することができます。開示された場合、雇用主は直ちに、法律に基づく雇用主としての要件を書面で求職者に通知し、ワシントン州司法長官が発行する公平機会法ガイドを提供する必要があります。
この改正は、従業員15名以上の雇用主に対して2026年7月1日から、従業員15未満の雇用主に対して2027年1月1日から施行されます。
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